初めて海外に行ったのは、20歳の時、アメリカでのホームステイに参加したことでした。

3週間という短い期間でしたが、家族と楽しく過ごしました。

お世話になった家族は、30代前半の夫婦、7歳、3歳の女の子、9か月の男の子という家族構成。

その頃、赤ちゃんとの接点がなかったので、9か月の男の子を見たとき、全く気付かなかったのですが。

その子はダウン症で、成長が遅く、他の子に比べるとかなり小さいという説明をされました。

心臓疾患も併せ持って生まれてきたということでした。

ダウン症についてもよくわかっていなかったので、説明を聞いても理解しきれなかったのですが、ママは私が理解出来るように、ゆっくり、何度でも、辞書を使いながら話してくれました。

私がいた3週間の間は、男の子は風邪をひくこともなく、元気に過ごしていました。

それどころか、家族も驚くほどの成長の時期だったのです。

スィングの椅子にはいつももたれているだけだったのが、自分で体を起こしたり、私の黒い髪を珍しそうに握りしめて離さなかったり。

一番の思い出は、初めて「ダーダーダー」と話したことです。

それは私一人の時だったので、最初、何が起こったのかわからなかったのですが、急いで家族を呼び、みんなで彼の言葉を聞いて、泣いて喜びあいました。

ホームステイ最後の夜、ママが何故この子がいるのに、私のホームステイを引き受けてくれたのか(ステイ代は無料なのです)、説明してくれました。

いつか、私も母親になるだろうから、覚えていてほしいということでした。

どんな女性でも、子供を持つとき、その子供が障害を持って生まれてくる可能性があるということ。

そして、それを隠したり、恥ずかしいと思ったりすることではないということ。

それが私のことでなく、友達のことであっても、その思いを忘れてほしくないということでした。

私は今でも、ママと話した時間がどれだけ大切だったか、忘れられないでいます。

その1年半後、その男の子は風邪をひいて、肺炎になり、そのまま他界してしまいました。

そして、私はそんな小さな男の子から、生きる意味を教えてもらいました。

彼もまた20年経った今でも、私の心の中にいます。

短い命ではあったけれど、家族にたくさんの喜びを運び、他人の私にも喜びと教えをもたらしてくれたのです。

今はもう連絡を取り合ってはいませんが、私はずっと彼らのことを忘れず、教えてもらったことを子供に伝えていこうと思っています。